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夏休みに読みたい一冊...

夏休みに読みたい一冊

外商部から高校様への毎月の新刊案内を作成しておりますOと申します。
生徒さんや先生方の立場から興味の湧きそうな新刊情報を早くお届けするように心がけています。
さて夏休みといえば読書感想文、好きな方もそうでない方もいらっしゃると思いますが、いずれにしても中学・高校生時代の夏休み、時間のたっぷりあるなか読んだ本は心に残るものです。
そこで今日は最近の新刊から、夏休みに読みたい長編小説を一冊ご紹介いたします。4月に発売されて気になっていたカズオ・イシグロの『忘れられた巨人』(土屋政雄訳 早川書房)をやっと読み始めてみました。
著者は6月に来日して各種のメディアでも話題になったばかりですね。長崎生まれの日系イギリス人作家なので親しみが湧きます。
とはいいつつ、イシグロさんの作品は『浮世の画家』(飛田茂雄訳 ハヤカワepi文庫 2006年)を読んだことがあるくらいで、名作の誉れ高く映画にもなっている代表作『日の名残り』(土屋政雄訳 ハヤカワepi文庫 2001年)、『わたしを離さないで』(同 2008年)などはまだ未読なのですが、これらは今後の楽しみでもあります。
最近イシグロさんへの関心が強まったきっかけは、ふとしたことから手にとった”A Pale View of Hills”(1982)という彼の第一作品の原書を読み始めたことでした。戦後間もなくの荒廃した長崎を舞台に、後にイギリスに渡ったある婦人の回想というかたちで物語は進みますが、その引き込まれる語り口や、人物の感情や心理描写の細やかさが印象的でした。それも高校生の方でも十分読めるようなわかりやすい英語なので、受験勉強の実践(息抜き?)としてもいいかもしれません。同作品は『遠い山なみの光』(小野寺健訳 ハヤカワepi文庫 2001年)として刊行されています。
さて『忘れられた巨人』の方ですが、噂のとおり、これまでのイシグロさんの作品に比べてファンタジーの要素が強いようです。舞台はイギリスの人もあまり住まない荒涼とした土地、時は6世紀頃というのでずいぶん古い時代。鬼や竜や妖精といった伝説上の魑魅魍魎が登場するところが、一見作品をファンタジー仕立にしているのですが、イシグロさんの筆致が坦々としているので不思議とリアリティーがある点がミソなのかもしれません。
ここに住む人たちには習性として記憶というものがいたって薄く、主人公の老夫婦も、自分たちに息子がいたかどうか、いたとしても顔が思い出せない、といったモヤモヤとした薄明のなかで生きています。けれども夫のアクセルは、このモヤのなかに一筋の光を見つけるように、闇のなかの記憶の糸をなんとかたぐりよせようとします。そこで思いついたことが、隣の土地に住んでいるらしい息子を探しに夫婦で旅に出ることでした。
……まだこのあたりまでしか読んでいませんので、これ以降は今後のお楽しみに。
ひとつだけ、この作品は過去を忘れやすい現代人の寓話であるのは明らかですが、物語の面白さからファンタジーとして読んでも十分楽しめそうで、そこにイシグロさんの作家としての手腕、ウマさがあるのだなぁ、と実感。
気になった方はぜひ書店で手にとってみてください!
皆さんよい読書の夏休みをお過ごしください。

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